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肘をケガして手術を受けた後に、
思うように肘が動かなくなることがあります。
これは「術後拘縮(じゅつごこうしゅく)」と言われるもので、
今回はこれがなぜ起こるのか、
どう治療できるのかを掘り下げていきます。
実は、肘頭骨折は結構やっかいなケガなんです。
治療をしても、術後に肘がうまく曲がらない、
伸びないといったトラブルが起こることがよくあります。
今回は、最新の治療法やリハビリ方法についても触れつつ、
わかりやすく解説していきますね。
肘頭骨折の基礎知識
まずは簡単に肘頭骨折について説明します。
肘頭というのは、肘のちょうど尖った部分にある骨で、
この部分が何かの衝撃で折れてしまうのが「肘頭骨折」です。
転倒などが原因でよく起こるケガで、
腕をついたときに肘の部分に強い力が加わると折れてしまうんですね。
肘頭骨折が厄介なのは、日常生活に大きな影響を与えること。
例えば、肘が思うように曲がらなくなると、
物を持ち上げたり、ドアを開けたりすることが難しくなります。
特に手術を受けた後に、この肘の動きが戻らない「拘縮」
という問題が頻繁に起こります。
手術後に肘が動かなくなる理由
ここで、なぜ手術後に肘が動かなくなってしまうのか
を考えてみましょう。
肘頭骨折の治療では、骨を正しい位置に戻すために
「テンションバンドワイヤリング」や「髄内釘」
といった方法が使われます。
これらは、肘頭の骨をしっかりと固定するために
重要な手術法ですが、この手術後に問題が発生することがあります。
まず一つ目の問題は、「鋼線」です。
これは骨を固定するために使われる金属製の線ですが、
この鋼線がうまく機能しないと、肘の動きを妨げることがあります。
具体的には、この鋼線が関節の動きを制限してしまい、
肘が曲がらなくなるんですね。
もう一つの問題は、「異所性骨化(いしょせいこつか)」です。
これは、骨が本来あるべきでない場所に形成される現象で、
手術後に発生することがあります。
この異所性骨化が肘の周囲にできてしまうと、
肘の可動域が制限され、肘が動かしにくくなってしまいます。
そして、忘れてはならないのが
「尺骨神経障害(しゃっこつしんけいしょうがい)」です。
尺骨神経は肘の内側を通る神経で、
この神経が手術後に圧迫されると、
痛みやしびれを引き起こし、肘の動きに悪影響を与えます。
特にリハビリが進まない原因の一つに、
この神経障害が関わっていることが多いです。
授動術による再手術
では、肘の動きが悪くなってしまった場合、
どうすればいいのでしょうか?
ここで登場するのが「授動術(じゅどうじゅつ)」です。
この手術は、肘の周りの組織や神経を調整して、
再び肘が自由に動けるようにするための方法です。
この論文では、肘頭骨折の手術を受けた8人の患者を対象に、
術後に拘縮が生じたケースに対して授動術を行いました。
結果として、授動術によって大幅に肘の可動域が改善された
ことが報告されています。
例えば、授動術前は肘がほとんど曲がらなかった患者が、
手術後には120度まで曲がるようになりました。
これは、日常生活での動作に必要なレベルの可動域です。
つまり、授動術を受けた患者の多くが、
肘をしっかりと使えるようになったということです。
具体的な手術内容
授動術の具体的な内容ですが、
まずは問題となっている鋼線を取り除くことが行われます。
これにより、関節の動きが妨げられていた部分が解消され、
肘の動きが改善します。
また、異所性骨化が見られる場合には、
この異常に形成された骨を削除します。
これによって、肘の可動域がさらに広がるのです。
次に、尺骨神経に対する処置が行われます。
この神経が圧迫されている場合、
神経を保護するために「神経剥離(しんけいはくり)」
という方法が取られます。
また、神経を移動させる「皮下前方移動術」も行われ、
神経の圧迫を軽減することで、痛みやしびれが緩和されます。
これらの処置により、肘の動きが劇的に改善するのです。
リハビリの重要性
授動術が成功しても、術後のリハビリが重要です。
肘の動きを取り戻すためには、術後すぐにリハビリを
開始する必要があります。
特に、肘を曲げたり伸ばしたりする動作を繰り返し行うことで、
関節の可動域を広げることができます。
リハビリでは、患者自身が自主的に取り組むことが大切です。
定期的に肘を動かす練習をすることで、拘縮を防ぎ、
スムーズな回復が期待できます。
また、リハビリの際には無理をしないことが重要です。
痛みが強い場合は、医師や理学療法士と相談しながら
進めるようにしましょう。
結論:授動術で未来を取り戻せ!
この論文の結論としては、肘頭骨折の手術後に
肘の動きが悪くなった場合、
授動術が非常に効果的であるということです。
鋼線や異所性骨化、尺骨神経の圧迫といった問題を解決することで、
肘の可動域は劇的に改善されます。
特に、再手術を受けることで、
日常生活に必要な肘の動きを取り戻すことができるため、
患者の生活の質が大幅に向上します。
今回の研究では、肘の動きが大幅に改善された患者が多く、
再手術が成功したケースが多いという報告がされています。
もし、手術後に肘の動きが悪くなってしまった場合は、
焦らずに再手術やリハビリを検討することが大切です。
肘が自由に動くようになることで、
生活の質を向上させることができるのできます!
論文タイトル: 肘頭骨折術後拘縮例の検討
著者: 大塚純子, 堀井恵美子, 洪淑貴
掲載誌: 日本肘関節学会雑誌
巻号: 27巻2号, 2020年