
今回は古いお話。
今の評価の原型にも見えるので、振り返ってみましょう。
「日常生活動作テストの手引」についてお話しします。
「ADL評価、施設ごとに違いすぎませんか?」
実は、1982年に厚生省が標準化しています。
なぜこの手引きが作られたか?
問題
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80種以上のADLテストが乱立
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施設ごとに異なる評価表
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相互比較ができない
解決策
3,388種の動作項目を収集。
代表動作を選出し、32項目に整理。
誰がテストしても同じ結果が得られる。
これが目的です。
4段階評価の基準
| 評価 | 程度 | 介護度 |
| 3 | 正常、またはほぼ正常 | 自立 |
| 2 | できるが、やや時間がかかる、やり方が普通でない | まあ自立 |
| 1 | なんとかできるが、時間がかかりすぎる、でき上りが不完全 | 半介助 |
| 0 | できない | 全介助 |
シンプルで明確。
全32項目の構成
8つのカテゴリー
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起居動作(6項目)
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移動動作(6項目)
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食事動作(5項目)
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更衣動作(5項目)
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整容動作(3項目)
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トイレ動作(3項目)
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入浴動作(2項目)
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コミュニケーション(2項目)
起居動作(項目1-6)
| 項目 | 内容 |
| 1 | ねがえる |
| 2 | 背臥位から長座位になる |
| 3 | 座位を保持できる |
| 4 | 床から立ち上る |
| 5 | 立位を保持できる |
| 6 | ベッドから椅子へ移る |
ポイント:時間の目安
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ねがえる:3分以上かかると「1」
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座位保持:15~20分が「3」の基準
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立位保持:10分以上が「3」、5分以上が「2」
移動動作(項目7-12)
| 項目 | 内容 |
| 7 | いざるなどの方法で移動する |
| 8 | 平地を移動する |
| 9 | 階段の昇降(高さ20cm、5段) |
| 10 | 敷居をまたぐ(高さ5cm、幅10cm) |
| 11 | 扉のある部屋への出入り |
| 12 | 物を運ぶ(4kg、10m) |
評価基準の具体例
平地移動:
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3:普通に歩ける
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2:100mを3~4分以内
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1:100m以下、または100m歩いても4分以上
階段昇降:
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3:手摺なしで足を交互に運んで昇降
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2:片足ずつ昇り・降りる
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0:車椅子のみ
食事動作(項目13-17)
| 項目 | 内容 |
| 13 | 箸かフォークまたはスプーンで食事をする |
| 14 | グラスの水を飲む |
| 15 | 水道の蛇口を開閉する |
| 16 | 大びんの蓋を開閉する |
| 17 | やかんの水をグラスに入れる |
評価のポイント
食事:
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3:30分以内に食べおわる
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2:30分以内、こぼさない
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1:30分経ってもおわらない、こぼす
水道蛇口:
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3:どんな種類でも楽に開閉
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2:開閉に1分以上かかる
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1:閉じても水がちゃんと止まらない
更衣動作(項目18-22)
| 項目 | 内容 |
| 18 | 丸首シャツの着脱 |
| 19 | ズボンまたはパンツの着脱 |
| 20 | ベルトをしめる |
| 21 | カッターシャツのボタンをはめる |
| 22 | 運動靴をはく(紐なし) |
注意点
着られるが脱げない → 「1」
着脱は両方できて初めて「2」以上。
丸首シャツ:
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3:5~15秒でスムーズ
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2:1分以内
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1:2~3分かかって不完全
整容動作(項目23-25)
| 項目 | 内容 |
| 23 | 歯をみがく |
| 24 | 顔を洗い、そしてふく |
| 25 | 髪をとく |
評価基準
歯みがき:
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3:十分にみがきコップの水で口をゆすげる
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2:ややぎこちないが口腔内の清浄は達せられる
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1:まねごとにおわる
トイレ動作(項目26-28)
| 項目 | 内容 |
| 26 | 排泄動作 |
| 27 | 後仕末する |
| 28 | 失禁の有無 |
失禁の評価
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3:失禁なし
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2:失禁はあるがコントロールできる(集尿器・カテーテル使用で介助不要)
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1:コントロールしようと努力するが失敗が多い
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0:全く大小便失禁、おむつ・カテーテル使用で全介助
入浴動作(項目29-30)
| 項目 | 内容 |
| 29 | タオルをしぼる |
| 30 | 背中を洗う |
片麻痺の工夫
タオルしぼり(評価2):
カランにタオルをひっかけてねじり水を切る
背中洗い(評価2):
長柄のブラシを使う、タオルの一方に紐をつけて洗う
コミュニケーション(項目31-32)
| 項目 | 内容 |
| 31 | 電話をかける |
| 32 | 言葉がはなせる |
電話の評価
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3:どんな電話でも使用できる
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2:ダイヤル廻しにときどき失敗
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1:失敗が多い、正しくまわせない
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0:かけられない、受けられない
補助具使用時の評価
基本ルール
短下肢装具・簡単な自助具:
能力が普通であれば「3」
車椅子使用:
平地を普通に移動できても「2」
なぜか?
「普通に歩くのとは異なる」から。
臨床への応用
作業療法士の方へ
1. 時間の基準を明確に
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食事:30分
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着脱:1分以内なら「2」
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移動:100mを3~4分
2. 「できる」と「実用性がある」は違う
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できても3分以上かかる → 「1」(実用性なし)
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できても不完全 → 「1」
3. 着られるが脱げないケースに注意
片方だけなら「1」。
両方できて初めて「2」以上。
4. 補助具使用を正しく評価
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自助具使用で普通にできる → 「3」
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車椅子使用 → 最高でも「2」
理学療法士の方へ
1. 移動動作の具体的基準を把握
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いざる:10mを3分以内 → 「2」
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平地:100mを3~4分以内 → 「2」
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階段:足を交互に運べる → 「3」
2. 立位保持の時間
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10分以上 → 「3」
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5分以上 → 「2」
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瞬間的 → 「1」
まとめ
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厚生省が1982年に標準化した32項目のADLテスト
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4段階評価(3:自立、2:まあ自立、1:半介助、0:全介助)
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時間と完成度が評価の基準
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「できる」と「実用性がある」は区別する
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補助具使用時の評価ルールを理解する
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着脱は「着る」と「脱ぐ」両方で評価
「誰がテストしても同じ結果」
これがADL評価の理想形です。
引用元
資料情報
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厚生省特定疾患 神経・筋疾患リハビリテーション調査研究班 ADL分科会
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日常生活動作テストの手引
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リハビリテーション医学 Vol.19 No.2:114-131頁(1982年3月)
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班長:佐々木智也、ADL分科会長:高橋勇
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