作業療法とは!!進路決定の参考に?

私は病院勤務の作業療法士です。

臨床で日々クライエントの生活と向き合っているところですが、
最近、高校生による職場見学に携わる機会があり、
今一度自分の仕事である作業療法とは」を考えるきっかけとなりました。


自分の当時を見返すと私が作業療法士という職業を知ったのは高校2年の進路相談でした。
当時は具体的な進路なんて考えてはおらず、漠然と心理学に興味がることを担任に相談
したところ、理学療法士作業療法士などの医療職があることを教えてくれました。
ちょうどその頃、認知症だった祖母が脳卒中に倒れ、寝たきりで会話ができなくなり、
手を固く握ったまま動かすこともできなくなりました。私はそのとき、たまにお見舞いに
行き手を握る以外、何もしてあげられませんでした。そんな経験が関係したかは
分かりませんが、その頃からリハビリ職を目指し、一浪を経てなんとかかんとか
大学に入学できたわけですが、、

実は最初から作業療法士を目指していた訳ではなく、結果的に作業療法士を選択する
ことになったのです。
というのも、当時の私は理学療法士作業療法士の違いが分からず、両方同時に目指していました。これらの専攻の大学受験では両者間で偏差値に差があり、その偏差値は理学療法士の方が若干上なのです。
お察しの通り、私は偏差値が届かず、消去法で作業療法士の道を選びました。
入学後や卒業後に分かるのですが、以外と周りにもそういう同期は多かったです。
(作業療法士あるある?)。

話を戻し、見学に来てくれた高校生たちも、漠然と『リハビリ』を目指してはいましたが、やはり両者の違いまでは区別していないようでした。私は先のとおり、消去法で選択し(もはや選択ではない)結果、作業療法士にやりがいを感じますし後悔もありませんが、やはりこれから同じ職を目指す若者たちには、自分たちが目指すものが何たるかを明確に知っておいてもらいたいのです。

理学療法士及び作業療法士
での作業療法の定義は、
「身体又は精神の障害に対し、応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、
手芸工作、その他の作業を行わせること」とされています。
この定義、授業でも暗記させられましたが、これ見て具体的なイメージまでは難しいでしょう。

というわけで、

進路を考える高校生に向けて、ここからは自分が考える作業療法士像を語ります。

作業療法士とは、生活を見るプロである。

病院に来られる方たちは病気や怪我をされた方たちです。
病気や怪我とは、骨折であったり、脳卒中であったり、消化器などの病気の手術後に機能が低下した状態(廃用症候群)、うつ病などの心の病気も含まれます。

想像して下さい。今あなたは利き腕を骨折しています。
手術は済みましたが痛みがあるし、まだうまく動かせません。
生活上どんなことに困るでしょうか?

困ることは山ほどあります。ご飯が食べ辛い、服が着辛い、字が書けないとテストも大変です。部活ができない。バイトができない。携帯電話が使いにくい。
当たり前の日常の生活が一変、身の回りの動きから、社会生活である学校や働き先でも支障が出ます。
そんな方たちの希望をよく聞き、実現可能なゴールに向かって支援してくのが理学療法士作業療法士の仕事です。

ところで、みなさんは部活の経験があるでしょうか?
例えばバドミントン部に所属していたとしましょう。
ラケットの面がシャトルに対して真っすぐ当たらないと悩みます。
その時、うまくなるには『どうしてうまく当たらないのか』、『どうすればうまく当たるのか』を考えることになります。
これを日常の生活にも当てはめてみます。
なぜ『食事がうまくできないのか』、『どうすればうまく食事ができるのか』。
食事をするには、スプーンを持つ、食べ物を掬う、口まで運ぶ過程が必要です。
それらの動作はどこの関節の運動が行うのか、どこの筋肉が動くのか、その筋肉はどの神経が司るのか、そんな解剖学的な知識を踏まえて動作を見ていきます。

仮に、つまみの力が弱いためにスプーンがうまく持てない方に対して『紙をちぎる』という訓練を実施するとします。
始めはティッシュから、続いてコピー用紙、今度はそれを4つ折りにしたものをという具合に物を使うと負荷を簡単に調節することができます。

このように作業療法とは人(関節がどのくらい動いて、筋力はどのくらいか など)や生活(何ができて何ができないか)だけではなく、人と、行う作業の特性や物の性質や環境とがお互いにどう作用するかという視点で治療を行う専門職です。

先の部活を例にすると、自分の体と向き合う陸上の短距離走長距離走理学療法、バドミントンなど道具を使用した運動、茶道や吹奏楽などは作業療法士の要素が多いかもしれません。
自分にどちらが向いているか、また自分がやりたいのはどちらか、少しでも参考になると幸いです。