手の解剖、運動を学ぼう!!
今回は複雑な手についての学びをまとめました!
基礎である解剖、運動学を押さえておきましょう!
【送料無料】 基礎運動学 第6版 / 中村隆一(リハビリテーション) 【本】 価格:7,480円 |
手の皮膚:
手掌面は皮膚が厚く、移動性に乏しい
(真皮層が手掌腱膜と密に結合し、腱膜が深層の中手骨骨膜や靭帯に移行するため)
⇒ 物品を把握したり保持しやすい
手根骨:8つの骨からなる。
近位手根骨⇒舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨
遠位手根骨⇒大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨
手根管:
屈筋支帯と手根骨が作る空間(滑液性の腱鞘に包まれる)
正中神経、長母指屈筋腱、浅指屈筋腱、深指屈筋腱、橈側手根屈筋腱が通る
尺骨神経管:
豆状骨、有鈎骨、手掌尺骨手根靭帯に囲まれた空間。尺骨神経、尺骨動脈が通る
指関節 の機能=把持するという上肢の最終目的行為を行う部分
障害されると上肢としての機能の大半を失う
<関節>
最も基本的な 蝶番関節
①手根・中手(CM)関節
②中手・基節(MP)関節
③基節・中節(PIP)関節
④中節・末節(DIP)関節
<運動>
指屈曲:
外在筋⇒深指屈筋(DIPの屈曲)と浅指屈筋(PIPの屈曲)
指伸展:
外在筋⇒指伸筋のみ
手内在筋 :
骨間筋(背側に4つ,掌側に3つ)と4つの虫様筋からなる
骨間筋 ⇒中手骨の間にあり指の開閉+指に側索を送ることにより屈伸にも関与
支配神経は主に尺骨神経(橈側の筋の一部には正中神経からの枝 も入る)
虫様筋⇒深指屈筋から起始し側索に合流する独特な筋
(骨から起始しない唯一の筋肉)
・物を動かす時,一方向に急に大きな力を加えれば,円滑なスタートは望めない.
・推進と同時にブ レーキをかけると静かに発進できる.
・指の運動でも,屈曲時に伸筋,手内在筋が同時に作用するので滑らかに動かせる.
・手関節が背屈していると,屈筋は過緊張となり握力は上がる.
・力を抜いた状態で手関節背屈位をとると,自然にMP関節は屈曲位となり,小指側では
PIPも屈曲位となる.
・力を抜いた状態で手関節掌屈位をとると,MP関節以下はすべて伸展位になるのが
自然な腱のバランス.
①
指伸筋腱の一部がMP関節部で基節骨基部背側に付着。
ドーム状に指伸筋腱を抑える矢状索と癒合。
⇒指伸筋腱がMP関節を伸展させる。
②
指伸筋腱の遠位は中央索に移行し、PIP関節を越えて中節骨基部背側に付着。
⇒PIPを伸展させる。
③
指伸筋腱が中節骨基部背側に付着する前に、両側から側索を分岐。
指伸筋腱の側索は、骨間筋の側索と合流し、三角状靭帯で固定され、両側の側索が結合し末節骨基部背側に付着。
⇒DIPを伸展させる。
実際の運動(屈曲)手順
A:
①総指伸筋がブレーキをかける
②深指屈筋は屈曲力として作用 (MP,PIP,DIPに作用)
③DIP関節が屈曲しようとするが斜支靱帯の緊張により屈曲不可
④まずPIP関節が屈曲を開始する
B:
①PIP関節が屈曲し斜支靱帯が弛緩すると、
②深指屈筋の作用でDIP関節が屈曲可能に
C:
①PIP関節が屈曲すると側索が緊張
②矢状索が末梢にずれ始め側索の走向はMPの回転中心よりも掌側へ
③MP関節の屈曲が始まる
(側索の癒着があると側索は掌側に滑らずMP屈曲制限の因子に)
④骨間筋は側索を通じて屈曲に作用
D:
①矢状索が末梢に滑り降りMPを包むことで強力な把握が可能に
(浅指屈筋、虫様筋の収縮)
②MP関節の屈曲により側索は緩み、DIP関節の完全屈曲が可能
③最後の完全把握時の主役は浅指屈筋
内在筋:
意識的にPIPとDIP(IP関節)を伸ばしたままMP関節を屈曲させる時,
深・浅指屈筋 は作用せず,虫様筋のみが作用する.
骨間筋はMP関節では虫様筋よりも背側を通っているので,MP関節の肢位に影響され
やすい.
⇒MP関節屈曲位では骨間筋のIP関節の伸展力は小さく,虫様筋によるところが大きい.
また,尺骨神経麻痺では,骨間筋が麻痺して緩んでいるため,MP関節の屈曲時に側索の
突っ張りがなく,屈曲ができなくなる.
したがって, MP関節伸展,IP関節屈曲の特徴的な鷲手変形となる
実際の運動(伸展)手順
A:
① 総指伸筋の基節骨停止部はMP関節屈曲位では弛緩
している.
②総指伸筋の力は,指全体に作用す る.
③深指屈筋はブレーキの役割を担う.
④A②とA③の力は,合力として,MP関節の伸展に作用する.
⑤MP関節が伸展してくるまで,側索は弛緩し,PIP関節の伸展
には作用しない.
B:
①MP関節が伸展してくると,総指伸筋の力は矢状索に吸収
され,PIP関節の伸展には作用しなくなる.
②MPが伸展してくると側索が緊張しPIPの進展が可能に.
③骨間筋の力がPIP関節の伸展に作用する.
※PIP関節が伸展することで,斜靱帯に緊張が伝わり
DIP関節の伸展が行われる
⇒この場合,虫様筋が収縮 し深指屈筋を緩めるので,
ますますDIP関節は伸展しやすくなる.
手指伸展:
示指と小指には固有伸筋腱があるため,独立して伸展が可能.
逆に中指,環指は伸筋腱の間に腱間結合がり,独立した動きが障害される.
MPとPIPの関係
MP関節とPIP関節屈曲位では,側索に緊張が伝わらず,DIP関節の伸展は不可能.
MP関節の屈曲位ではIP関節の伸展はしにくい (逆に屈曲力に加担している).
骨間筋の作用はMP関節の肢位に大きく左右されるため関節の回転中心と側索の
位置に注意を払う必要がある.
MP関節屈曲位の時には,総指伸筋の基節骨付着部は末梢にずれて緩み,PIP関節の伸展に
作用.しかし,側索は緩んでいるので,PIP関節の伸展には働かない.
MP関節が伸展位の時は,総指伸筋の基節骨付着部は緊張しており,総指伸筋はMP関節
の伸展に作用.逆に中節骨基部の停止部は弛緩して,PIP関節の伸展には作用しない.
骨間筋が側索を通じて緊張し,PIP関節の伸展に作用する.
⇒橈骨神経麻痺をみるとき,PIP関節が伸展できるからといって,総指伸筋が効いて
いると考えるのは誤り.
※逆に,尺骨神経麻痺の時,MP関節は総指伸筋の作用で伸展できるが,PIP関節はMP関節が
伸展位では骨間筋の作用なしには伸展できず, 鷲手変形となる.
参考文献:
①基礎運動学 医歯薬出版株式会社
②日 本 義 肢 装 具 学 会 誌 Vol. 15 No. 3 1999
生体をもっと知ろう―義肢装具士のための生体機構学― 手 ・上肢筋 の機能解剖
【送料無料】 基礎運動学 第6版 / 中村隆一(リハビリテーション) 【本】 価格:7,480円 |