手の解剖、運動を学ぼう!!

 

 

今回は複雑な手についての学びをまとめました!

基礎である解剖、運動学を押さえておきましょう!

 

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手の皮膚:

  手掌面は皮膚が厚く、移動性に乏しい

 (真皮層が手掌腱膜と密に結合し、腱膜が深層の中手骨骨膜や靭帯に移行するため)

⇒ 物品を把握したり保持しやすい

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手根骨:8つの骨からなる。

 近位手根骨⇒舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨

 遠位手根骨⇒大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨

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手根管

  屈筋支帯と手根骨が作る空間(滑液性の腱鞘に包まれる)

  正中神経、長母指屈筋腱、浅指屈筋腱、深指屈筋腱、橈側手根屈筋腱が通る

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尺骨神経管:

  豆状骨、有鈎骨、手掌尺骨手根靭帯に囲まれた空間。尺骨神経、尺骨動脈が通る

 

指関節 の機能=把持するという上肢の最終目的行為を行う部分

障害されると上肢としての機能の大半を失う

<関節>

  最も基本的な 蝶番関節

 ①手根・中手(CM)関節

 ②中手・基節(MP)関節

 ③基節・中節(PIP)関節

 ④中節・末節(DIP)関節

<運動>

 指屈曲:

  外在筋⇒深指屈筋(DIPの屈曲)と浅指屈筋(PIPの屈曲)

 指伸展:

  外在筋⇒指伸筋のみ

 手内在筋 :

  骨間筋(背側に4つ,掌側に3つ)と4つの虫様筋からなる

  骨間筋 ⇒中手骨の間にあり指の開閉+指に側索を送ることにより屈伸にも関与

      支配神経は主に尺骨神経(橈側の筋の一部には正中神経からの枝 も入る)

  虫様筋⇒深指屈筋から起始し側索に合流する独特な筋

      (骨から起始しない唯一の筋肉)

 

・物を動かす時,一方向に急に大きな力を加えれば,円滑なスタートは望めない.

・推進と同時にブ レーキをかけると静かに発進できる.

・指の運動でも,屈曲時に伸筋,手内在筋が同時に作用するので滑らかに動かせる.

・手関節が背屈していると,屈筋は過緊張となり握力は上がる.

・力を抜いた状態で手関節背屈位をとると,自然にMP関節は屈曲位となり,小指側では

 PIPも屈曲位となる.

・力を抜いた状態で手関節掌屈位をとると,MP関節以下はすべて伸展位になるのが

 自然な腱のバランス.

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指伸筋腱の一部がMP関節部で基節骨基部背側に付着。

ドーム状に指伸筋腱を抑える矢状索と癒合。

⇒指伸筋腱がMP関節を伸展させる。

 

指伸筋腱の遠位は中央索に移行し、PIP関節を越えて中節骨基部背側に付着。

⇒PIPを伸展させる。

 

指伸筋腱が中節骨基部背側に付着する前に、両側から側索を分岐。

指伸筋腱の側索は、骨間筋の側索と合流し、三角状靭帯で固定され、両側の側索が結合し末節骨基部背側に付着。

DIPを伸展させる。

 

実際の運動(屈曲)手順

 

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A:

①総指伸筋がブレーキをかける

②深指屈筋は屈曲力として作用 (MP,PIP,DIPに作用)

DIP関節が屈曲しようとするが斜支靱帯の緊張により屈曲不可

④まずPIP関節が屈曲を開始する

B:

①PIP関節が屈曲し斜支靱帯が弛緩すると、

②深指屈筋の作用でDIP関節が屈曲可能に

 C:

 ①PIP関節が屈曲すると側索が緊張

 ②矢状索が末梢にずれ始め側索の走向はMPの回転中心よりも掌側へ

 ③MP関節の屈曲が始まる

 (側索の癒着があると側索は掌側に滑らずMP屈曲制限の因子に)

 ④骨間筋は側索を通じて屈曲に作用

 D:

 ①矢状索が末梢に滑り降りMPを包むことで強力な把握が可能に

 (浅指屈筋、虫様筋の収縮)

 ②MP関節の屈曲により側索は緩み、DIP関節の完全屈曲が可能

 ③最後の完全把握時の主役は浅指屈筋

 

内在筋:

 意識的にPIPとDIP(IP関節)を伸ばしたままMP関節を屈曲させる時,

 深・浅指屈筋 は作用せず,虫様筋のみが作用する.

 骨間筋はMP関節では虫様筋よりも背側を通っているので,MP関節の肢位に影響され

 やすい.

⇒MP関節屈曲位では骨間筋のIP関節の伸展力は小さく,虫様筋によるところが大きい.

  また,尺骨神経麻痺では,骨間筋が麻痺して緩んでいるため,MP関節の屈曲時に側索の

 突っ張りがなく,屈曲ができなくなる.

 したがって, MP関節伸展,IP関節屈曲の特徴的な鷲手変形となる

 

実際の運動(伸展)手順

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A:

① 総指伸筋の基節骨停止部はMP関節屈曲位では弛緩

  している.

②総指伸筋の力は,指全体に作用す る.

③深指屈筋はブレーキの役割を担う.

④A②とA③の力は,合力として,MP関節の伸展に作用する.

⑤MP関節が伸展してくるまで,側索は弛緩し,PIP関節の伸展

 には作用しない.

 

B:

①MP関節が伸展してくると,総指伸筋の力は矢状索に吸収

 され,PIP関節の伸展には作用しなくなる.

②MPが伸展してくると側索が緊張しPIPの進展が可能に.

③骨間筋の力がPIP関節の伸展に作用する.

※PIP関節が伸展することで,斜靱帯に緊張が伝わり

   DIP関節の伸展が行われる

⇒この場合,虫様筋が収縮 し深指屈筋を緩めるので,

 ますますDIP関節は伸展しやすくなる.

 

手指伸展:

  示指と小指には固有伸筋腱があるため,独立して伸展が可能.

  逆に中指,環指は伸筋腱の間に腱間結合がり,独立した動きが障害される.

 

MPとPIPの関係

 MP関節とPIP関節屈曲位では,側索に緊張が伝わらず,DIP関節の伸展は不可能.

 MP関節の屈曲位ではIP関節の伸展はしにくい (逆に屈曲力に加担している). 

 骨間筋の作用はMP関節の肢位に大きく左右されるため関節の回転中心と側索の

 位置に注意を払う必要がある.

 

 MP関節屈曲位の時には,総指伸筋の基節骨付着部は末梢にずれて緩み,PIP関節の伸展に

 作用.しかし,側索は緩んでいるので,PIP関節の伸展には働かない.

 

 MP関節が伸展位の時は,総指伸筋の基節骨付着部は緊張しており,総指伸筋はMP関節

 の伸展に作用.逆に中節骨基部の停止部は弛緩して,PIP関節の伸展には作用しない.

 骨間筋が側索を通じて緊張し,PIP関節の伸展に作用する.

  ⇒橈骨神経麻痺をみるとき,PIP関節が伸展できるからといって,総指伸筋が効いて

   いると考えるのは誤り.

 

※逆に,尺骨神経麻痺の時,MP関節は総指伸筋の作用で伸展できるが,PIP関節はMP関節が

 伸展位では骨間筋の作用なしには伸展できず, 鷲手変形となる.

 

参考文献:

 ①基礎運動学 医歯薬出版株式会社

 ②日 本 義 肢 装 具 学 会 誌 Vol. 15 No. 3 1999 

  生体をもっと知ろう―義肢装具士のための生体機構学― 手 ・上肢筋 の機能解剖

 

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